キャットフードの原材料に使われることのあるビートパルプ。

●ビートパルプって猫の体に悪いって聞いたけどホントなの?
●ビートパルプってそもそも何ですか?

キャットフードに配合されることのあるビートパルプについてまでギモンを感じて調べるあなたは、かなりの猫好きさんのはず。

ネットでビートパルプについて調べるとかなりの悪役であることに気づくでしょう。

多くのサイトでビートパルプは危険!とされています。

キャットフードを紹介するサイトの中には怪しい情報(というより事実ではない情報)があふれています。

その中でもビートパルプについてはひどいですね。

珍説、奇説、トンデモ説がとにかく多い。

ビートパルプは危険な原材料ではなく、むしろ機能性が高いともいえる原材料です。

ビートパルプとは、砂糖の原材料である「甜菜(てんさい)」を絞った後に残った繊維質を乾燥させてペレット状にしたものです。

(出典:http://www.jakks.jp/feed/single/singlefeed15.html

この記事では、ビートパルプとは何なのか?ということについて正確な情報をお伝えします。

キャットフードの原材料表示にビートパルプがあるからっていって、不安になる必要はありませんよ。

それではいってみましょう!

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ビートパルプの作り方

ビートパルプについてきちんと理解したい人のために、まずはビートパルプの作り方を説明します。

ビートパルプが危険というサイトの多くは、ビートパルプの作り方すら理解していないのではないかと思っています。

ビートパルプの「ビート」は「甜菜(てんさい)」のこと。

「パルプ」は「植物繊維」のことです。

甜菜は砂糖の原材料ですね。

この根の部分(白いところ)を千切りにして温水に浸して、糖分を溶け出させます。

次に糖分が溶けだした温水(糖液)を煮詰めて砂糖を作ります。

そうすると、千切りにした甜菜の根の部分が残ります。

これを乾燥させて固形にしたものがビートパルプです。

ビートパルプはわざわざ作るものではなく、砂糖を作るときにできる副産物なんですね。

日本では北海道でのみ生産されていて、平成27年のビートパルプ生産量は約18万6千トンです。

これに対して輸入ビートパルプは約40万トンあり、アメリカ産がそのうち約28万トンと中心です。そのほか中国産、チリ産を輸入しています。

ビートパルプは甜菜の搾りカスを乾燥させてペレット状にしたものです。

ビートパルプペレット

日本で生産されるビートパルプは乾燥用の機械を使って乾燥させているようです。

(出典:ビートパルプ蒸気乾燥設備

ビートパルプについて説明するサイトの中には

  • ビートパルプの作り方は2種類ある
  • 砂糖の取り出し方には2種類ある

など意味不明の記述をしているものがあります。

2つの方法とは、

  • 圧力を加える方法
  • 薬品を使う方法

そして、薬品を使ったほうが安上がりなので薬品を使うほうが多いとか。

実際は甜菜から砂糖を取り出す方法は湯に浸すだけです。

その後に圧搾(あっさく)といって圧力を加えて甜菜を絞るプロセスがありますが、薬品を使って甜菜から砂糖を取り出す方法などありません。

またビートパルプの作り方にしても、甜菜の絞りカスを乾燥させただけです。

2種類の作り方があるわけではありません。

さらに意味不明なのが「ビートパルプを抽出する」という表現。

抽出するのは糖液であって、ビートパルプは残ったものを乾燥させて作るのです。

薬品を使ってビートパルプを作るというのは、「硫酸カルシウム」を使う場合のことを言っているのでしょう。

この硫酸カルシウムは湯に浸した甜菜を絞る(圧搾)ときに、効率を高めるために使われます。

※硫酸カルシウムについてはこの後説明します。

難しい言葉を使うと「圧搾補助剤(あっさくほじょざい)」といいます。詳しく知りたい方は次の資料の180ページに「PULP PRESSING」という項目があるので、参考にしてください。

Beet-Sugar Handbook

この資料によると、硫酸カルシウムを加えることで、甜菜の中のペクチンが固まってゲル状になるので、より絞りやすくなるようです。

硫酸カルシウムはビートパルプを作るために使うのではなく、圧搾の効率を高めるために使うものなのです。

ちなみに国産(北海道産)のビートパルプ製造には硫酸カルシウムは使われていないようです。

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ビートパルプに関する珍説・奇説・トンデモ説まとめ

ビートパルプの作り方が分かったところで、ネットで語られているビートパルプについての珍説、奇説、トンデモ説を見ていきましょう。

ひとつずつ確認していきます。

ビートパルプには硫酸系薬剤が残っている

ビートパルプの危険性を煽る情報で最も多いのがコレ。

ビートパルプには硫酸系薬剤が残っているというもの。

硫酸系の薬剤って言われたら、それはそれは危険な感じがしますよね。

確かに硫酸系の薬剤という言い方は嘘ではありません。

ビートパルプを製造するときに「硫酸カルシウム」という化学物質が使われることがあります。

でも、この硫酸カルシウムって私たちも日常的に口にしているんですよ。

硫酸カルシウムは食品添加物のひとつで食品衛生法では「指定添加物」に分類されています。

何に使われるかというと、豆乳を固めて豆腐にするときの凝固剤として使われることが多いです。

天然のものは石膏から作られますが、現在は化学的に合成されたものがほとんどのようです。

ニガリの代わりに使われるようになったのが硫酸カルシウム。

だから私たちが豆腐を食べるときに口にしているのです。

では硫酸カルシウムの危険性はどうなのでしょうか?

ネットで「硫酸カルシウム 危険性」と検索するといくつかの情報が出てきます。

なかにはどうしても硫酸カルシウムを危険な添加物にしたい人もいるようです。

そのような人が主張する硫酸カルシウムの危険性とは「自然界に存在しない不自然な人工物だから」だそうです。

いやいや、自然界に存在する危険な物質もたくさんあるでしょう。

フグの毒にあたったら死ぬことあるし、毒キノコだって自然に存在しています。

自然のものだから安全、人工的な化学物質だから危険というのはナンセンス。

自然のものでも危険なもの、安全なものがあるし、人工物でも危険なもの、安全なものがあるのです。

ちなみに海水の成分は水と塩分ですよね。

その塩分って何からできてるか知っていますか?

ほとんどは塩化ナトリウム(塩)ですが、硫酸カルシウムも微量に含まれているのです。

CaSO4っていうのが硫酸カルシウムのことです。

(出典:https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj1965/60/5/60_335/_pdf

つまり、「自然界に存在しない」っていうのも嘘なんですよね。

海の水の中に存在しているんですから。

大切なのは正しい知識を身につけること。

情報の真偽を見分ける目を持つことです。

話がそれましたが、ビートパルプに残っている硫酸系の薬剤というのは全く危険なものではありません。

硫酸系の薬剤って・・・よほど危機感をあおりたいのでしょうか??

硫酸系の薬は猫の便意に影響を与え、便秘になったり下痢になったりする

続いてのトンデモ説はこちら。

硫酸系の薬は猫の便意に影響を与え、便秘になったり下痢になったりする。

硫酸系の薬って「硫酸カルシウム」のことだと思うのですが、おそらく書いている人も理解していないんでしょうね。

豆腐食べて便秘になったり、下痢になったりしますか?

硫酸カルシウムが便意に影響を与えるというエビデンスはどこにもありません。

猫の健康状態がわかりにくくなる

続きましては、「便を固めて軟便を隠すので猫の健康状態が分かりにくくなる」説について。

ビートパルプは猫の腸内環境を整えて便を正常な状態にしてくれるのであって、軟便を隠すとか意味がわかりません。

軟便が改善されたら、体調が良くなったってことじゃないんですかね??

ビートパルプに残った糖分が猫の身体にはよくない

「ビートパルプに残った糖分が猫の体に良くない」説について。

確かに猫には炭水化物(糖質)は必要ないのですが、糖質を消化できないわけではありません。

猫のすい臓に存在するアミラーゼという酵素で糖質を消化することは可能です。

苦手ですけどね。

猫のエネルギーはタンパク質と脂質から生まれています。

だから、糖分が猫の体に良くないというか必要ないというのは嘘ではありません。

しかしそれ以前に、サイトによってビートパルプには糖分が残ってるという説と、糖分は絞り出されてしまっているので残っていない説があるのですが、どちらが本当なのでしょうか?

ビートパルプには糖分が残っているのでしょうか?残っていないのでしょうか?

これについて、ビートパルプの成分組成についての情報を探したのですが、見つけることができませんでした。

その代わりにビートパルプをさらに洗浄、乾燥させて作る「ビートファイバー」の成分組成を見つけました。

洗浄、乾燥させただけなので、ビートパルプとビートファイバーは成分組成自体は変わらないと思います。

(出典:ビートファイバーの成分組成

これによるとわずかに糖質が残っていますね。

「ビートパルプには糖分が残っている」が正解のようです。

このわずかの糖質を気にする人はビートパルプ入りのキャットフードは避けたほうがいいでしょう。

しかしビートパルプには糖質が残っているというデメリット以上のメリットがありますからね。

ビートパルプの効能についてはこの記事の最後にまとめておきます。

猫は肉食動物なのでビートパルプを消化できない

続いて嘘ではないけどかなりの珍説がこちら。

「猫は肉食動物なのでビートパルプを消化できない」説。

確かに猫はビートパルプを消化できませんが、それは犬でも人間でも同じです。

ビートパルプは成分のほとんどが食物繊維です。

食物繊維は猫だけでなく、人間も消化できません。

肉食動物だから消化できないというわけではなく、そもそも食物繊維は消化されずに排出されるものです。

消化されないからこそ、食物繊維は重要なのです。

ちなみに食物繊維は猫でも人間でも腸内にいる腸内細菌が分解しています。

わかりやすくいうと、腸内細菌のエサになっているということです。

このときに大腸で短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)が生成され、これは吸収されてエネルギー源となりますが、ごくわずかです。

ビートパルプはキャットフードのかさ増し材

ビートパルプはキャットフードのかさ増し材という主張も多いですね。

これもビートパルプの危険性を煽りたい人の作り話です。

かさ増しするのならビートパルプを使うより穀物(トウモロコシなど)を使いますよ。

例えば、ビートパルプとトウモロコシ、どっちが安いと思います?

平成30年5月の農林水産省の統計データを見てみましょう。

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noubukka/attach/pdf/index-32.pdf

ビートパルプ(外国産)は50㎏で3,789円

とうもろこしは1トンで48,210円となっています。

1㎏あたりで計算すると

  • ビートパルプ・・・約75円
  • とうもろこし・・・約48円

ですね。

さあ!もしあなたが悪徳経営者で儲けるためだけにキャットフードを作るとしたら、かさ増しをするのにビートパルプととうもろこし、どちらを使いますか?(笑)

足し算、引き算ができる人なら安いほう、使うでしょ?

「ビートパルプはキャットフードのかさ増しに使われる」説に信憑性がないことがおわかりいただけたでしょうか。

それにビートパルプをかさ増し目的で使うなら、もっと大量に使いますって。

原材料表示のもっと前のほうに記載されるでしょ。(原材料表示は原則的に使用量の多い順に記載されます)

かさ増しされた分だけ栄養が減る

「かさ増しされた分だけ栄養が減る」説について。

トンデモ説というより、ナンセンスの一言。

ビートパルプに含まれる食物繊維は犬や猫にとっても重要な栄養素のひとつです。

先ほども書いたように食物繊維は消化されてエネルギーになることはありませんが、腸内細菌のエサになり、腸内環境を整えるという役割があります。

栄養が減るというより、栄養が添加されるというべきでしょう。

ビートパルプがなくなると、腸が自力で便を固くできない

最後の奇説がこちら。「ビートパルプがなくなると、腸が自力で便を固くできない」

これを目にしたときは、まさに目がテンになりました。。。

ビートパルプ入りのキャットフードからビートパルプ不使用のキャットフードに変更すると、腸が自力で便を固くできなくなるそうです。

ビートパルプがあろうがなかろうが、小腸で栄養が吸収された後の不要な物は、大腸に送られ、水分が吸収され、うんちが作られます。

うんちが固くなるのは、大腸で水分が吸収されるからであって、水分が吸収されるという働きはビートパルプがあろうがなかろうが関係ありません。

キャットフードを変更して下痢になる猫さんはいますが、それはビートパルプ(食物繊維)の影響ではなく、おそらくアレルギーでしょう。

アレルギーを引き起こす原材料(チキンでも魚でも穀類でもアレルゲンになり得る)が影響していると考えるほうが妥当です。

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ビートパルプのメリット

ではビートパルプにはどんなメリットがあるのかまとめておきます。

ビートパルプはほとんどが食物繊維でできています。

食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水に溶けるかどうかということですね。

あ、そういえば、もうひとつビートパルプについて、不溶性の食物繊維しか含まれていないので、うんちが固くなりすぎて便秘になると説明しているサイトがありましたが、これも事実ではありません。

ビートパルプは水溶性と不溶性とをバランスよく含んでいます。

この図でいうところの「リグニン」「セルロース」は不溶性食物繊維。

「ヘミセルロース」「ペクチン」が水溶性食物繊維です。

水溶性食物繊維の特徴

水分を吸ってゲル状になり、腸内をゆっくりと通過するので、血糖値の急上昇を防いでくれます。

満腹感も得られます。

コレステロールを吸着して便として排泄します。

腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整えます。

不溶性食物繊維の特徴

便のかさを増して適度な固さにします。

腸のぜん動運動を促進して排便を促します。

有害物質をからめとって便として排出します。

食物繊維にはこのような働きがあり、便秘や下痢を改善するのに役立つのであって、便秘や下痢になるのではありません。

ロイヤルカナンが販売している便秘猫のための療法食にもビートパルプが配合されています。

ビートパルプでなくても、さつまいもや果物で食物繊維を摂ることは可能です。

しかし、より低コストで良質な食物繊維が摂れるのがビートパルプなのです。

むしろ便秘になりやすい猫が多いのだから、キャットフードに配合したほうがいいんじゃないの?と思うくらいです。

ビートパルプの不安点

最後にビートパルプについて不安な点がひとつあるので、それについても説明しておきます。

ビートパルプは甜菜から砂糖を作るときにできるわけですが、砂糖は世界中でとても消費量の多いもの。

ということで、より栽培しやすくしたいわけです。

そのため、害虫の被害を少なくしようと、特にアメリカでは遺伝子組み換えの甜菜が栽培されている可能性が高いです。

記事中でもちょっと書きましたが、アメリカからの輸入ビートパルプが約28万トンあります。

この中に、遺伝子組み換えの甜菜が使われている可能性は十分にあるでしょう。

遺伝子組み換え作物の危険性については完全に解明されているわけではありませんが、解明されていないということ自体が怖いとも言えます。

ビートパルプ自体には危険性はありませんが、原料である甜菜が外国産の場合、ちょっと不安になる人がいるかもしれません。

そしてキャットフードに使われるビートパルプの産地がどこなのかまではラベルを見ただけではわかりません。

不安に思う人はビートパルプ入りは避けるか、メーカーに産地を確認したほうがいいかもしれませんね。

ただですね、ビートパルプはそもそもペットフード用に生産されているわけではなく、家畜の飼料用に作られています。

家畜の飼料については、ペットフード安全法よりも厳しい飼料安全法という法律で規制されています。

遺伝子組み換え作物を飼料とする場合、農林水産省によって「家畜に対する安全性」と「畜産物の人に対する安全性」の二つの側面から審査されています。

そして遺伝子組み換えの甜菜は、日本で安全性が確認され、販売・流通が認められている作物のひとつです。

http://www.mhlw.go.jp/topics/idenshi/dl/h22-00.pdf

それでも厚生労働省なんて信用できない!という人はビートパルプ入りのキャットフードは避けるようにしましょう。

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まとめ

以上、ビートパルプにまつわるネット上にあふれる偽情報についての説明をしてきました。

いかに怪しい情報が氾濫しているかがおわかりいただけたでしょうか。

ビートパルプに限らず、当サイトはネット上の情報を鵜呑みにせず、きちんと裏をとって正しい情報を紹介するサイトであり続けたいと思います。